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既存の音声システムとデータネットワークを活用し、
シームレスなコミュニケーション環境を低コスト・短期間で実現


導入事例 津島市民病院様


既存のシステムを利用しながら段階的にIP電話を導入できるマイグレーションモデルにより、初期コストおよび稼動までの期間が抑えることができた。また、1台で内線電話・携帯電話の2役をこなす無線LANデュアル端末の活用により、院内スタッフ間のコミュニケーションがさらに充実した。

[ 2006年12月6日掲載 ]


導入事例概要
業種: 総合病院
ソリューション: オフィス・イノベーションモデル「マイグレーションモデル」、「無線LANデュアル端末連携モデル」
製品: FOMA®デュアル端末(注1)、SIPサーバ(注2)(IP Pathfinder)、無線アクセスポイント(AP208)など
規模: FOMA75台、アクセスポイント120台
構築期間: 約3ヶ月
課題と効果
1 ポケットベルに代わる、院外にいる医師への連絡手段を導入したい。 1台で内線電話・携帯電話の2役をこなす「無線LANデュアル端末連携モデル」を導入。コールバックを待つポケットベルとは違い、状況を直接伝達し、指示を仰げるようになった。
2 医師へのシームレスなコミュニケーション環境の構築を、低コストかつ短期間で実現したい。 既存の音声システムを活用してSIP対応IP電話(注2)を部門単位で導入できる「マイグレーションモデル」、および既存のオーダリングシステム(注3)のデータネットワークを利用することにより、医師へのシームレスな通信手段の構築が低コストかつ短期間で実現できた。

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導入の背景

スタッフ間のコミュニケーション充実のため、通信手段の革新を図る

松崎 安孝
津島市民病院
院長
(兼看護専門学校長)

津島市周辺の地域住民の健康を支える津島市民病院様では、「心かよう医療を」の基本理念のもと、「正しく確実な診断をし」「安全で効率的な治療を行い」「良い結果を得る」ことを目指し、日々の診療や治療を行っています。1997年から2006年にかけて実施した病院全体の増改築に伴い、新しい診療科や施設の増設、中部地区初の定位放射線治療機器(サイバーナイフ)導入、病床数の増床といった改革も進行。それに合わせて医師や医療スタッフも増員しました。

津島市民病院様では以前、医師は内線用PHSと院外連絡用クイックキャスト(旧ポケットベル)の2つを利用していました。しかし、重要な通信手段の1つであったクイックキャストのサービスが、2007年3月で停止されることになったのです。そのため、クイックキャストに代わる、院外の医師への通信手段の確保が急務となりました。

「当院を利用される患者様、地域住民の方々、そして当院の医療スタッフ同士の間で心が通いあうためには、コミュニケーションが最も重要だと考えています。スタッフを増やしてチーム医療を進めれば、その重要性はさらに高まります。そのコミュニケーションを充実させるために必要なのが、通信という手段です。我々は、クイックキャストのサービス停止を機会に、新しい通信手段への革新を行うべき時期が来たのだと判断しました。」(松崎氏)
そこで着目されたのが、既存の電話環境を利用しながら、SIP対応IP電話を部門単位で段階的に導入できる「マイグレーションモデル」と、1台のFOMA®デュアル端末が内線電話・携帯電話の2役をこなす「無線LANデュアル端末連携モデル」でした。

システムの概要

既存の音声システムとデータネットワークを活用し、シームレスなコミュニケーション環境を低コスト・短期間で構築

富士通の「マイグレーションモデル」は、既存の音声システムやネットワーク環境を利用し、低コスト・短期間で新しいIP電話システムを部門単位で段階的に導入できるのが特長です。津島市民病院様では、診療内容や検査結果などの伝達を目的として、すでに富士通のオーダリングシステムが導入されており、ネットワークは構築済みでした。既存の音声システムを活用し、さらにネットワークに音声データを統合して、無線LANデュアル端末を導入するという形で、医師へのシームレスなコミュニケーション環境を構築しました。
無線LAN環境の構築では、綿密なエリア設計、およびアクセスポイントの電波特性や電波到達範囲の向上によって、他社に比べてアクセスポイント数を3分の1に低減。設置を廊下に限定し、美観と音声品質の双方を同時に満足させたのも大きな特長です。

伊藤 邦彦
津島市民病院 事務局医事課
情報管理グループ統括主任

「導入前に調査したところ、コミュニケーション環境を全く新規に構築するとしたら、すでに建物が完成してしまっているので、機器の設置工事等の難易度が非常に高くなることがわかりました。しかしマイグレーションモデルなら、既存の音声システムやオーダリングシステムのデータネットワークが活用できるため、機器の新規導入や工事が少なくて済みます。その結果、初期コストが抑えられ、しかも稼動までの期間が短縮できます。これが富士通の優位性でした。」(伊藤氏)

「無線LANデュアル端末連携モデル」は、医療機器への影響が少ないと実証されているFOMA®デュアル端末を、院内では内線電話、院外では携帯電話として使用できるIP電話システムです。コールバックを待つクイックキャストとは違い、院外にいる医師へ連絡する際もすぐに会話ができます。状況を直接伝達し、指示を仰げるようになったため、患者様への対応を速さと質の両面で向上させました。

現在、津島市民病院様では内線と外線で別の番号を使い分けていますが、今回導入されたSIPサーバは、相手の居場所に応じて内線・外線を自動的に切り替える機能も備えています。この機能を利用すれば、1つの番号に電話をかけるだけで、相手が院内にいれば自動的に内線電話として、院外にいれば外線(携帯電話)として接続されるようになります。
津島市民病院様では、2006年1月に「マイグレーションモデル」「無線LANデュアル端末連携モデル」の導入を決定。当初は医師の業務エリア(医局・病棟・診察室)のみでの導入とし、同年4月に運用を開始したのですが、実際に使用してシステムの利点を実感していただいた結果、ラウンジや更衣室等の共有エリアまでカバー範囲を拡大しました。アクセスポイントの位置・設定の調整が難しい部分もありましたが、同年7月には、院内ほぼすべての場所でFOMA®デュアル端末を使用することが可能になりました。
「富士通を選んだもうひとつの理由は、医療機器メーカーを含む他メーカーとの連携について、十分なノウハウがあったことですね。医療機器メーカーとの連携が取れていれば、システムの構築も稼動も早く、稼動してからの安定性も良い。結果として、現状の機器をより効率的に活用できます。患者様の生命に関わることですから、安定性の良さは特に重視しました。」(伊藤氏)

医師への連絡方法:システム導入前/システム導入後

導入の効果

医師と現場スタッフ間の確実な情報伝達が、患者様への対応の質を向上させる

神谷 里明
津島市民病院
診療局長
(兼外科部長兼手術部長)

今回のシステムの導入・運用に関して、現場の声を伺いました。まず、連絡を受ける医師の感想です。

「医師は元々、24時間365日フル待機の職業です。いつでも呼び出される可能性がある、というのは別にストレスにはなりません。逆に、すぐに連絡が取れないほうがストレスになりますね。たとえ離れた場所にいても、現場にいる看護師や技師、同僚の医師からの連絡が、迅速かつ正確に受けられること、すぐに的確な指示を出せること、これが重要です。特に、重症の患者様を受け持っているときなどは痛感します。以前はスタッフが外出先の医師と連絡を取る場合、クイックキャストに連絡してコールバックを待っていました。しかしこれは、本来なら患者の処置や対応に割かなければならない時間を、医師との連絡に割いていることになります。本システムは、スタッフのそういった負荷を軽減し、患者ケアにより力を注ぐために一役買っているのではないかと思います。」(神谷氏)

仲尾 麻美
津島市民病院 看護局看護師

では、医師に連絡をするスタッフ側の評価はどうでしょうか。看護師の方に感想を伺いました。

「クイックキャストだと、医師に本当に連絡がついたかどうかはコールバックがあるまでわかりません。ですから、それを待つ間が不安でした。しかし、このシステムになってからは、電話に出てもらえばすぐに情報を伝えられる、もし出なければすぐに他の連絡手段を考える、というように状況がはっきり分かります。連絡待ちの不安が解消されたことで、我々のストレスも軽減されました。また、主治医からの直接の指示をすぐに仰げるということは、より的確な対処を、ただちに行えるということですから、何よりも患者様のために良いことだと感じています。」(仲尾氏)

将来の展望

遠隔診断システムの実現に期待大

津島市民病院様では、音声以外の情報伝達についても本システムが活用できたらと期待を寄せています。

「最も期待しているのは、画像情報のやりとりです。たとえば、研修医が専門医に心電図やレントゲンなどの画像を送って意見を求める、といった使いかたができれば、新人教育にも役立ちます。当院に入ってきた新人医師にとっても、いつでも先輩に相談できる環境があれば安心だと思います。もちろん、携帯電話の画質が格段に向上し、確実な診断に足りるだけの情報を得られるようになれば、という条件はありますが。画像のやり取りを自発的に試みている医師グループもあるくらいですから、現場の期待はかなり高いようです。」(松崎氏)

また、地域医療の発展という面では、本システムのベースとなっている「ネットワーク」と、患者様の情報が一元管理される「電子カルテシステム」の連携も期待されています。地域内の各病院で、電子カルテシステムおよび他病院とのネットワーク化が導入されれば、患者様が旅行先などでかかりつけ医以外の病院にかかっても、今までの検査結果や治療記録がすぐに参照できます。当然、カルテのデータは患者様の個人情報であるため、万全のセキュリティ対策が要求されますが。

「これからの病院にとって、地域医療連携の強化は大きな社会的課題であり使命です。地域内での行政・大学・病院間のコミュニケーションや情報共有が不可欠であり、それを支えるのが通信環境やネットワーク環境です。そのためにも、富士通にはより優れたシステムを、より低コストで提供していただきたいですね。」(松崎氏)
患者様の健康を守るために努力し続けている津島市民病院様を、情報インフラという面で支えるために、富士通では今後も努力してまいります。

営業担当者近影【営業からの一言】
富士通株式会社 ネットワークフロントセンター 西日本ネットワークビジネス部
小西 昭二

我々がシステム面で津島市民病院様のコミュニケーション充実にご協力するということは、ひいては患者様の治療や健康維持にご協力する、ということになるのではと考えています。チーム医療を重視する津島市民病院様と同じく、当社でもお客様をサポートするために、ハードウェア・ソフトウェア・運用・保守などのチームが一団となっています。今後も、津島市民病院様の「心かよう医療」の充実にお役に立てるよう、医療関連のシステム、音声通話、コミュニケーションツールなどのソリューションを、トータルにご提供していきたいと思っております。

【津島市民病院様 施設概要】

所在地 〒496-8537 愛知県津島市橘町3丁目73番地
院長 松崎 安孝
設立 昭和18年7月(町立病院として設立)
病床数 許可440床(一般病床)
診療科目 19診療科
ホームページ 津島市民病院

【ご紹介した製品・サービス】

用語解説

注1: FOMA®デュアル端末
NTTドコモが開発した、企業向けの携帯電話端末。無線LAN(IEEE802.11b規格準拠)によるIP電話機能を持つ。「FOMA」はNTTドコモの商標または登録商標。
注2: SIPサーバ/SIP対応IP電話
SIP(Session Initiation Protocol)は、IP電話などで用いる通信制御プロトコル。SMTP、HTTPに続く、新しいインターネットプロトコル。転送機能や発信者番号通知機能など、公衆電話網に近い機能を備えている。SIPで電話の仕組みを作ると、さまざまな電話サービスの追加が容易になる。
SIPサーバは、IPネットワーク上でSIP通話に必要なセッション確立などの処理を仲介するサーバ。当社製品では、IPテレフォニー「CLシリーズ」、SIPサーバ「IP Pathfinder」が該当する。
SIP対応IP電話は、SIPで通信制御を行うIP電話。
注3: オーダリングシステム
病院内の関係部署へのオーダーを、医師や看護師がコンピュータから直接入力するシステム。

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