京セラコミュニケーションシステム株式会社は、1995年、京セラ株式会社の経営情報システム事業部が分離独立して設立されました。 その後、京セラ電子機器株式会社と合併したのち、第二電電(現KDDI株式会社)の出資を受け、ICT、エンジニアリング、 経営コンサルティングという事業の三本柱を中核に、グループ7社の企業に発展してきました。 今回の事例では、ICT事業におけるISO20000認証取得に焦点を当て、取得の苦労や努力に関して語っていただきました。
京セラコミュニケーションシステム様(以下KCCS様)の事例を3回にわたり紹介いたします。
ITIL®の知識だけでなく、企業文化も、認証取得の役に立っていたようですが、担当の方々にはその意識はなかったようです。
独自文化をうまく生かしたところに焦点を当て、お話を聞きました。
[2011年6月15日掲載]

大竹 哲史氏
京セラコミュニケーションシステム株式会社
BPO事業部
東京サービスマネジメント課
課長

徳毛 博幸氏
京セラコミュニケーションシステム株式会社
プラットフォーム事業本部
BPO事業部
副事業部長
私たち(大竹氏、徳毛副事業部長)は、現在BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)のビジネスにかかわっていますが、 元々は入社以来アプリケーションの設計開発、導入を担当していました。 97年QMSの取得後、業務の進め方を体系立てて整理して、実施していくという土壌で育っていたことが、ISO20000の取得には役に立ちました。(徳毛氏)
私はフィールドエンジニアをしていましたが、データセンター事業部が東京にできたタイミングで異動して、24時間365日の運用業務を行いました。 3年ほどして、ISMSを取得する活動に携わり、2007年12月からISO20000の取得を行いました。(田口氏)
コンタクトセンターのオペレーターからスタートして、スーパーバイザを経てマネージャーとなり、その後品質関連の業務を行い、 データセンター事業ではISMS取得、ITIL®推進を行ってきました。(亀田氏)
「真面目」、「元気がある」ですかね。(徳毛氏)
みんな頑張り屋ですね。(田口氏)
KCCSの企業文化の一番の特徴は、京セラ独自の経営管理手法であるアメーバ経営を実践していることです。 アメーバ経営は全社員で経営に参画する仕組みと言い換えることができます。 “アメーバ”という小さな組織に分けて、小集団部門別採算制度を確立していきます。 組織を細分化して部門ごとに採算を追求することで、社員一人ひとりが経営に参画します。 また、若い時から部門経営に携わることで、経営者マインドをもったリーダ育成が可能な仕組みでもあります。 このことが、経営という観点からサービスのご提案・提供に役立っていると思います。 ですから、お客様の事業にどのような利益がもたらされるかも考えて、業務に当たることができます。
会社というものは、仕組みやルールを作っても、正しい考え方で運用されないといけないわけです。
社内では、「嘘をつかない」「卑怯なことをしない」という話をしています。 当り前のことのように思われるかもしれませんが、ビジネスのプレッシャーの中で守りきるには勇気が必要です。 それを日々の業務の中で実践することで、人間力が磨かれてくるのです。(徳毛氏)
事業はフロー系とストック系に分類しています。 ある程度事業が確立しているフロー系の事業は日々の採算を重視しますが、新規事業や設備投資を伴うストック系の事業には、 毎日の時間管理を徹底し、予実管理を行い目標との乖離を把握して、マネージャーが回収までの道のりを明確にしています。 どのプロジェクトのどのプロセスにどれだけ時間がかかったかは、デイリーで入力して把握できるようになっています。
ISO20000を取得することに関しても、効果が見えづらいわけですが、認証取得という目標管理と工数管理をしっかりしていくことが重要だと思います。 経営的な回収は、これから可視化していかなければならないと思っています。(徳毛氏)
当時事業部長だった秋枝副本部長の号令で、トップダウンで着手しました。 最初はITIL®を導入する調査を開始したのですが、J-SOX法対応も同時に進める必要があり、それだったら、 ISO20000を取得しようという指示になりました。(徳毛氏)
着手は2007年12月で、取得目標が1年後の2008年12月でした。 着手当時は、ITIL®という言葉は知っていましたが、ISO20000がどういったものかもわからず、ゼロからのスタートでした。 ですから、コンサルティング会社から支援いただくことを前提として計画を立てました。 今考えると、コンサルタントなしでは、取得できなかったと思います。(田口氏)
![概略スケジュール[11月~12月]ITIL/規格理解[12月~1月]認証範囲決定[1月~3月]充実度調査[4月~7月]文章作成・課題対策[7月~8月]教育/運用[9月]内部調査[10月~11月]外部調査[12月]認証取得](/itil/imgv3/vol1_1_kccs.jpg)
取得時のKCCSの体制は、ISO20000専任の担当者はいませんでした。 誰もが、業務を抱えつつプロセスやドキュメントを整備したので、最初はもっとコンサルタントが手伝ってくれるものだと思っていました。 実際は、コンサルタントから、ひな形の提示はありましたが、現場のヒアリングをも含め、ドキュメントの整備はKCCSのメンバーが実施しました。
しかし、今考えてみるとコンサルタントが大半を準備したら、理解不足で私たちだけで運用できなかったかもしれないと感じています。 結果的にコンサルタントが手伝わないことは、運用面も考えた「愛のムチ」だったということが、今になって理解できるようになりました。(亀田氏)

田口 秀次氏
京セラコミュニケーションシステム株式会社
データセンター事業部
業務改革課
品質管理グループ長
認証取得を開始した当時は、京都に1拠点、東京に2拠点で、3000台ほどのサーバを110名超程度のメンバーで運用していました。
レベルの調査に1カ月かけ、更にアセスメントに2カ月かけました。 結果をみると、課題は盛りだくさんでした。ISO20000では、サービスごとの採算が分かっていなければならないのですが、 アメーバ経営で部門としての採算は分かっていても、サービスごとには分かっていない部門もありました。 また、東京と京都で同じサービスメニューなのに、サービス立ち上げ時期が違っていたため、 後から立ち上げたサービスの方が新しいバージョンのツールを導入していて情報開示レベルが高いなどの差があったり、 オペレーターによる自動化の工夫のレベルが異なっていたりという違いがありました。(田口氏)
また、ISO20000を導入すると、お客様からの要望を素早く対応することができなくなるのではないかという不安がありました。 つまり、従来は柔軟に対応してきたことも、承認なしには対応できなくなるため、現場では改善が遅くなるというジレンマを感じる状況もありました。(亀田氏)
最初の動きがわからないことが、推進役として精神的にきつかったですね。 でも、社風が真面目なせいか、現場の反発はあまりなかったです。誤解がある時は、時間をかけて話し合うようにしました。 特に、個人スキルに依存したローカルルールや東京と京都で文化が違う点は、時間をかけました。 こういったところは、経営側から現場がどうなっているか見えづらいところで、これを可視化することがコストを削減することに繋がります。 アメーバ経営のおかげで、どのような作業に何時間かけていたかが分かっていたので、プロセスを変えると、どこがコスト増で、 どこがコスト削減になるか事前にメンバーに示すことができたことが良かったと思います。
スモールスタートということで、今まで使っていたツールをそのまま使ってスタートさせたので、現場の負担を増やさずに済んだと思います。 ISO20000導入に当たり、従来のツールをカスタマイズしましたが、新規に導入したツールはありませんでした。(田口氏)
現在は、新たにツール(注1)を導入し、自動化を進めています。(亀田氏)
亀田 和美氏
京セラコミュニケーションシステム株式会社
データセンター事業部
業務改革課
課長
最初は、コンサルタントが講師になり推進メンバーと経営者を対象とした勉強会を実施しました。
次に、100名以上の運用メンバー全員でITIL®ファウンデーションを取得しました。 KCCSには、取得を奨励する資格制度があり取得する場合には奨励金が出るのですが、当時はITIL®関連の資格は入っていませんでした。 そこで、ISO20000取得を目標にしたのを機にITIL®の資格を奨励する資格として認定してもらい、受験費用は会社負担にしてもらいました。
ITIL®マネージャ試験は大変です。
まとめて勉強しても難しいので、朝早く出社して少しずつ勉強しました。
マネージャの試験は、回答に○
、
×
を付けて合格点数に達したかどうかというものではなく、
レポートを書いて回答する形式なので、指導者がいないと、なかなか、結果を出すのが難しかったです。(亀田氏)
変更に関しては、現場長(データセンター長)の承認で行っており、不在の時は、他のセンターの現場長が相互承認する形になっています。 たしかに、スピードという面では承認が入る分、認証取得前より遅くなったと感じますが、お客様との連携で特に大きな問題にはなっていません。(亀田氏)
構成管理は、担当者にルールを決めて、
をファイルサーバに入力しています。(田口氏)
構成品の棚卸や共有資産の管理に関しては、アメーバ経営の発注ルールがあり、物と伝票を一体で管理するという文化があるので、物と書類の連携ができなくなるということはありません。
その他、社内での発注にも必ず伝票を書く習慣があり、他の部署の資産の移転や他部署へのサービスの提供も伝票がセットとなっています。 また、管理業務には必ずダブルチェックをするルールがあります。 これは、ミスを低減し、問題を明確にするという文化だと思いますが、作業品質だけでなく管理品質を上げるためにも役に立っています。 昔から、ダブルチェックは省かず、工数をかけてよいということになっています。(徳毛氏)
トップダウンでISO20000に取り組んだというからには、さぞ、推進役は苦労をして現場を説得してプロセスを定着させたのだろうという予想を見事に打ち砕いていただきました。 現場の方も認証取得をやらされているという感覚も大きいのかと思いきや、意外にすんなりと実行に移されていました。 これは、推進役の方も現場の方も気づいていない、企業文化が影響していると強く感じました。
伝票と物品を必ず一致させる管理は、不正な取引を防止するための仕組みです。 こうした、当たり前ですがなかなかできない上、一見、ISO20000とは関係ない仕組みが、構成管理する上で大きな役割を果たしていたと感じました。 やはり、取り組んで1年で取得できた背景には、KCCS様独自のバックボーンが有効に作用していると思いました。
次回は、リーダー育成に関するストーリーになります。お楽しみに。
| 本社所在地 | 京都市伏見区竹田鳥羽殿町6(京セラ本社ビル内) |
|---|---|
| 設立 | 1995年9月22日 |
| 資本金 | 29億 8,594万 6,900円 |
| 従業員数(連結) | 2,664名(2011年3月末現在) |
| 売上高(連結) | 938億5,549万(2011年3月期) |
| ホームページ |
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