地域に向け医療、介護、保健、福祉を含むトータルヘルスケアを提供する社会医療法人愛仁会様は、グループの中核となる病院の建て替えを機に、音声系インフラと情報系インフラを整備・統合した新しいコミュニケーション基盤を導入すると同時にIP固定電話、内線利用できるスマートフォン、無線IP端末を利用したIPナースコールシステムの導入を実現しました。10年後、20年後の経営に向けたICTの活用を視野に、インフラの整備を進めています。
[2015年11月24日掲載]
業種: | 医療・福祉 |
---|---|
導入ソリューション: | 統合コミュニケーション |
1 | 病院の建て替えプロジェクトを契機に将来の拡張性、柔軟性の高いネットワーク環境を構築したい | 音声系インフラと情報系インフラを整備・統合した新しいコミュニケーション基盤を導入。パフォーマンスの向上でシステムアクセス時のレスポンスを改善。スマートフォンと電子カルテ連携など将来の拡張にも柔軟に対応可能 | |
2 | モバイル端末を院内コミュニケーション用として活用したい | 内線として利用可能なスマートフォンと無線IP端末を利用したIPナースコールシステムの導入により、応答前に患者様の情報を把握可能。看護師の業務負担軽減を実現 |
社会医療法人愛仁会様の二羽の鳩のマーク
愛仁会様は、大阪市西淀川区に設立した千船診療所を起源として急性期医療を中心に診療科目を増やして総合病院へ、さらに介護、保健、福祉分野の機能を拡充して社会医療法人へと発展してきました。人生におけるすべてのステージにおいて医療、介護、保健、福祉を積極的に提供するトータルヘルスケアを実現すべく、社員総会を最高議決機関とする組織体制のもと非同族、合議制の経営を行っています。
同法人では、早くからICTを活用してきました。レセプトコンピュータをはじめ、1970年代には医事会計システム、1980年代にはオーダリングシステム、2000年代には電子カルテシステムを導入してきたほか、人事給与システムや部門別原価計算システムなど多くの導入実績があります。「ITは経営に役立てるもの」という方針のもと、ICT戦略が積極的に推進されています。
「2010年頃より、良好な経営状態の中でリハビリテーション病院、高槻病院、千船病院の建て替えプロジェクトが推進されてきました。音声インフラのIP化を含む新しいコミュニケーション基盤は、こうした新たなインフラの中で将来にわたって有効利用できると考え、これらのプロジェクトにあわせて法人内で導入することを決めました」と、社会医療法人愛仁会本部 企画部兼医療情報部 課長 井内伸一氏は導入の背景を語ります。
同法人では、新しいコミュニケーション基盤とともに、IP固定電話、内線利用できるスマートフォン、無線IP端末を利用したIPナースコールシステムの導入を行いました。
これらの導入について、井内氏は「富士通からの提案が検討のきっかけ」と話します。「正直に言うと、IP電話については必要性を感じたことがありませんでした。しかし、病院単体ではなく法人全体に対しての提案であったことからメリットがあると考え、導入を検討することにしました」と仰います。富士通の提案は、新しいコミュニケーション基盤を活用したスマートフォンと電子カルテ連携や、看護記録の入力など、お客様の将来の姿まで考慮した拡張性、柔軟性の高い内容でした。
井内 伸一 氏
社会医療法人愛仁会本部
企画部兼医療情報部
課長
井内氏がもう1つの理由として挙げたのが「ネットワークインフラの一括整備」です。職員が1,000人程度の規模のときと、現在のような5,000人規模では利用頻度が全く違い、トラフィック量が劇的に増えてパフォーマンスが低下するといった問題が頻発するようになりました。そのため、ネットワークインフラを一新することで、ネットワーク環境を改善したいと考えたとのことです。
今回は富士通を含め、3社が名乗りを上げました。井内氏がその中で富士通を選定したポイントは、機能とコストの要件を満たしていたこと、電子カルテシステム導入の実績、そして提案力でした。「単にIP化により電話が良くなるという提案ではなく、音声インフラのIP化を含めたコミュニケーション基盤の全体像を示しながら将来に向け有効利用できる可能性を提示していたことが重要なポイントになりました」(井内氏)。
導入は、2012年12月から高槻病院の新病棟が開設する2014年10月までの期間で行われました。「導入期間中は、富士通および富士通パートナーの日新電設に細やかにサポートしていただき、感謝しています」と、井内氏は評価しています。
導入に際して最も苦労したのは、内線電話として利用する端末の選定でした。当初はランニングコストの関係で従来型携帯電話を利用することも検討したが、総務省の「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」を順守すべく、スマートフォンを無線LANモードに切り替えて使用することにしました。上記指針においては、携帯電話より出力電力が低い無線LAN機器の利用は手術室や集中治療室等に規制されていないため、従来のPHSの運用をほとんど変える必要がないからです。コストについても、通信事業者との契約を見直すことで抑えることができました。
導入の効果として、「ネットワークインフラを整備し、利用環境を改善できました」と井内氏は語ります。パフォーマンスの向上で、情報システムにアクセス時のレスポンスが改善されました。IP固定電話にPC用のLANケーブルを接続できるため、従業員数の増加に伴うLANコネクター不足を解決する効果もあったと言います。
また、音声インフラのIP化により実現したIPナースコールシステムについて、看護師からも高い評価を受けています。以前のシステムは、ナースコールがあったときにPHSに病室とベッド番号、患者名がテキストで表示されるだけのものでした。新しいシステムでは無線IP端末に一般や緊急などの呼び出し種別、病室とベッド番号、名前、症状、担当者などの患者情報が見やすいフォント、アイコンでわかりやすく表示されるため、状況がより把握しやすくなり、看護師の業務負担の軽減が図れています。
井内氏は、短期的な展望として、2017年に新築移転する千船病院への導入、IPナースコールシステムのスマートフォン対応、スマートフォンからの看護記録の入力機能などを挙げています。特にIPナースコールシステムについては、症状に応じた質の高い医療を提供するために、見やすい画面へのさらなる改善を図り、患者様の情報を的確に把握していきたいと話します。
長期的な展望としては、患者が地域でより良い医療サービスを受けられるように、コミュニケーション基盤を拡張して患者様の情報を共有する地域医療連携への活用の可能性について言及しました。来院前に症状がわかれば、自宅での経過観察、訪問診療、救急車での搬送など状況に応じた対応が可能になります。こうした仕組みが実現すれば、将来在宅医療にも活用できるでしょう。
井内氏は、これらは音声系インフラと情報系インフラの両方が整っていてこそ可能になる未来だと言います。「コミュニケーション基盤を整備することで、10年後、20年後に何ができるかを考えるときの選択肢が大きく広がったのです」(井内氏)。
富士通に対しては、新しいコミュニケーション基盤の導入により内部で対処できないトラブルが発生した場合の迅速な対応を期待されています。富士通は、今後もサポートのサービスレベルを落とさないことをお約束するとともに、導入したコミュニケーション基盤をさらに有効活用いただけるよう、社会医療法人愛仁会様の経営を支えてまいります。
中央は、社会医療法人愛仁会 井内氏
左より、富士通 ネットワークサービス事業本部 川口、西日本営業本部 武田
右より、富士通 西日本営業本部 木全、日新電設 システム部 高野
10年にわたるお付き合いの中で、医療業界ではまだあまり普及していないコミュニケーション基盤をご導入いただき、また当社の提案から始まったと言っていただいたこと、非常に嬉しく感じています。各施設では導入時にいろいろな課題がありましたが、皆様に利用されていることに安心しております。今後も導入する施設を拡大するために良い提案、良いサポートを心がけ、社会医療法人愛仁会様のビジネスに少しでもお役に立てるよう、関係者一同頑張ってまいります。
富士通 西日本営業本部 関西ヘルスケア統括営業 第一営業部 武田 泰治
所在地 | 〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3丁目2番1号 淀川5番館4階 |
---|---|
代表者 | 理事長 内藤 嘉之 |
設立 | 1958年11月 |
事業概要 | リハビリテーション病院、高槻病院、千船病院を中心に、福祉や介護などの各種施設と連携することで、人生のすべてのステージにおいて医療、保健、福祉、介護を含むトータルヘルスケアを提供 |
ホームページ | 社会医療法人愛仁会 ホームページ |
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。