鹿児島県下JA(15JA)や連合会を専門的に指導する立場にあるJA鹿児島県中央会様は、平成21年度から信用系と管理・経済系の二本立てでネットワークを構築した「新共用ネットワーク」をご利用されています。ここに外部からのセキュアな接続を可能にするネットワークサービスを追加採用したことで、これまでネットワークに接続できなかった組合員農家や生産現場において、どこからでもセキュアにアクセスできるようになりました。農業が厳しい時代に直面している現在、ICTを活用した新しい農業分野のネットワーク基盤のあり方として注目されます。
[ 2012年3月27日掲載 ]
お客様の業種: | 農業協同組合 |
---|---|
導入サービス: | FENICSⅡ ユニバーサルコネクト(スマートフォン・PC接続サービス)、FENICSビジネスVPNサービス |
構築期間: | 1か月 |
1 | 営農指導や渉外活動において、さまざまな環境から新共用ネットワークにセキュアに接続できるネットワークが必要 | PCだけでなく、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器からもセキュアなリモート接続が実現。インターネットアクセスも可能なので、既存回線を使って安価に利用できる | |
2 | 山間部や離島など、ブロードバンドが普及していないエリアが多くある | マルチキャリアに対応しているので、広範囲に渡ってサービスの提供が可能 | |
3 | 個別の設備投資や運用コストは抑えたい | 現在持っている回線をそのまま利用でき、サービスの追加対応なので、低コストで導入可能。運用負荷も軽減 |
JA鹿児島県中央会様は、県内のJAや連合会を会員とする総合指導機関であり、会員に対して経営指導・監査、農政・広報活動、営農・生活指導、教育指導、情報システム導入指導などを日々行っています。
農業従事者の高齢化や荒廃地の増大、また平成22年に宮崎県で発生した口蹄疫の余波など、鹿児島県の農業も非常に厳しい状況に置かれています。こうした中にあって指導機関として組合員農家の農業を守り、発展させていくことを基本理念として掲げる同会では、JAの経営管理の高度化や事業運営を支えるシステムの整備・拡充に積極的に取り組んできました。
同会は平成21年4月から、信用系と管理・経済系の二本立てで構築されるイントラ内システム「新共用ネットワーク」を運用しています。それまでのネットワークは信用系と共用化を実現していましたが、「だんだんと時代にそぐわない部分が増えてきました」と同会 総合情報システム部 部長 松元五月男氏は語ります。コスト面から信用系と共用してきたところ、信用系のネットワークで情報系を扱うとさまざまな無理が生じるようになってきたのです。「特に問題になったのは帯域です。情報系で扱うデータ量が増えるに従い、信用系で一本化することは現実的ではないと判断しました」(松元氏)。
松元 五月男氏
JA鹿児島県中央会
総合情報システム部 部長
同会が新共用ネットワークに採用したのは富士通の「FENICSビジネスVPNサービス」でした。松元氏はその理由として「ブロードバンド普及率が47都道府県で最下位という鹿児島県のネットワーク事情にも対応できるマルチキャリア対応、高度なセキュリティ対策、さまざまな拡張サービス」といった点を挙げます。また、同部 総合情報システム課 調査役 鐘ケ江竜二氏は「信用系は従来通りの堅牢性を重視したネットワークのままで、業務系回線とインターネットを共用化することでコストを抑えることが可能になりました」と振り返ります。現在は県内約500のJA店舗・拠点を新共用ネットワークに接続し、利用しています。
鐘ケ江 竜二氏
JA鹿児島県中央会
総合情報システム部
総合情報システム課 調査役
構築後、順調に稼働を続けてきた新共用ネットワークですが、運用を続けるうちにいくつかの課題や要望も明らかになってきました。たとえば、営農指導や渉外活動に新共用ネットワークを活用できないかという意見があります。
鹿児島県を代表する農業のひとつが畜産です。この分野は最近、経営の大規模化が進み、牛を500頭、1,000頭といった規模で飼育しているケースも珍しくありません。生産現場の規模が大きくなるほど、より効率的な情報収集や飼育管理が求められるようになります。新共用ネットワークを活用して、ICTの力で現場の効率化を支援することはできないだろうか。一段階進んだネットワークのあり方を模索するうちに、アイデアとして浮かんだのがFENICSの拡張サービス「FENICSⅡユニバーサルコネクト(以下、ユニバーサルコネクト)」を使った牛舎監視システムとの連携でした。
鹿児島県では牛に万歩計を装着し、歩数を監視することで繁殖期を確認する「牛歩システム」を実験的に導入しています。牛は繁殖期の前兆として歩数が増えることが判明していますが、そのサイクルは牛ごとに異なります。正確なサイクルを捉えないと、授精のタイミングを逃すことになり、農家にとっては大きな機会損失につながりかねません。人間が24時間、牛を監視して繁殖期を特定することは困難ですが、牛に装着した万歩計のデータを計測し続けることで、牛の特性を把握し授精適期を見分けることが可能になります。従来、スタンドアロンで導入していたこのシステムを、新共用ネットワークと連携させることで、飼育管理の効率化に一役買えるのでは、と同会は考えたのです。
ユニバーサルコネクトを採用した最大の理由として、松元氏は「PCだけでなくスマートフォンやタブレットなどからも、安価かつセキュアにアクセス可能なこと」を挙げます。ブロードバンドの普及が進まない鹿児島県において、モバイル回線の接続サポートがマルチキャリア対応であることは非常に重要なポイントとなります。また、イントラに直接接続できない組合員でも、既存のフレッツや3G回線などインターネットを利用してのアクセスが可能です。外部からの接続もすべて暗号化されているので、情報漏えいなどの心配もありません。
加えて、ゲートウェイ機能を備えているので、接続者を個別に認識してアクセスを制御することができます。もちろん通信ログも記録できますので、不正なアクセスのトレースも可能です。
鐘ケ江氏は「FENICSにサービスを追加するという形だったので、導入期間も1カ月と短くて済み、個別の設備導入も必要ありません。運用は富士通に任せられるので、負荷が軽いことも魅力でした」と語ります。
現在、同会やJA鹿児島県経済連の指導の下、トライアル的に生産農家の牛舎で新共用ネットワークと牛歩システムの連携が行われています。牛に取り付けられた万歩計のデータが専用の機器を通じて新共用ネットワークに送信され、生産農家は自宅のPCやスマートフォンからデータを閲覧できます。牛の状態をチェックするために頻繁に牛舎に足を運ぶ必要がなく、いつでもどこからでも牛の状態を確認できるため、組合員からの評判も上々とのことです。
また、最近では牛歩システムのほかにも、電算部門のリモート保守(在宅監視)を試みているそうです。「既存のシステムやデバイスをそのまま活かすことができる、それがユニバーサルコネクトの最大の魅力ですね」(松元氏)。
松元氏はこれまでの運用を振り返り、「業務処理だけでなく県域のインフラとして活用できるネットワークに成長したと実感しています。さまざまな支援事業とともにネットワークが一緒に育ってきている、という感じでしょうか」と語ります。今後は牛歩システムなど適用事例をさらに増やしていくほか、モバイルデバイスを利用した渉外活動にも活用していきたいとしています。
また、鹿児島県の名産であるお茶の生産現場における情報収集に利用することが検討されています。具体的には、圃場に設置したフィールドサーバにて気象データを取得し、無線ネットワークを介して情報を収集する環境を整備、新共用ネットワークを通じて気象データを蓄積し、他のシステムと連携させてデータの参照・分析を行います。さらにモバイル環境から気象データの参照やダウンロードを可能にする仕組みも考慮しているそうです。
鹿児島県というブロードバンドの普及が遅れているエリアにあって、農業の効率化を図るため、これからもICTによるさまざまな支援を行っていきたいと語る松元氏と鐘ケ江氏。「どんなところで農業をしていても、そこに役立つデータを届けたい。ユニバーサルコネクトがそのラストワンマイルになってくれればいいと思っています」。
その願いを実現するため、富士通はこれからもネットワークソリューションの向上に努め、農業の発展を支援してまいります。
JA鹿児島県中央会様ではネットワーク/サーバ基盤をはじめ、多くのシステムを富士通と共に構築させていただいております。
営農分野でも現場系といわれる圃場や牛舎・牛などを直接センサーでセンシングして、その情報を営農活動に生かす取り組みがはじまっています。
こうした新しい取り組みを実現するために、富士通はクラウド・サーバ・システム開発・通信機器・キャリアサービス・PC・タブレット等ICTの総合ベンダーとして、鹿児島県の農業・農家発展のお手伝いしていければと思います。
九州支社 農林水産営業部
吉岡 英行
所在地 | 鹿児島市鴨池新町15番地 |
---|---|
代表者 | 会長 松﨑 俊明 |
設立 | 昭和23年 |
ホームページ | JA鹿児島県中央会 ホームページ |
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。