NGN時代のビジネスを加速するネットワークセミナー
東京講演レポート
「NGN時代のビジネスを加速するネットワークセミナー」(注1)は2007年夏、東京・名古屋・大阪・福岡の4ヶ所で開催されました。話題の「セカンドライフ」をテーマとした基調講演では、バーチャルワールドにおける新しいコミュニケーションやビジネスの可能性が提示されました。また、富士通のサービスをご利用いただいているお客様にからは、企業経営や企業戦略におけるネットワーク活用の効果について、生の声を伺うことができました。
ここでは、最初の開催地である東京講演の概要をご紹介します。
開催日 | 2007年8月22日 水曜日 |
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開催時間 | 14時30分 |
会場 | 東京ドームホテル |
主催 | 富士通株式会社 |
プログラム
基調講演 | 仮想世界が与えるリアルへの影響 ~バーチャルワールドセカンドライフの可能性~ |
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富士通講演 | NGN時代におけるネットワークサービスの取り組みについて |
お客様事例講演 | 情報システム化戦略における「ネットワークサービス」のポイント |
基調講演
仮想世界が与えるリアルへの影響 ~バーチャルワールドセカンドライフの可能性~
浅枝 大志氏
株式会社メルティングドッツ
代表取締役
セカンドライフ(注2)を中心としたバーチャル空間におけるプロジェクトデザイン、コンテンツ制作、企画立案、コンサルティングサービスを提供している株式会社メルティングドッツ。その若き代表者である浅枝氏の講演は、ゴッホの絵の世界をセカンドライフで作り上げる、という美しい映像から始まりました。2Dでは決して実現できない「絵画の中を動き回る」ことを、3Dバーチャルワールドが可能にしたのです。
「セカンドライフは当初、『目的のないゲーム』と紹介されていました。しかし今では、『3Dプラットフォーム』という意識に変化しています。なぜなら、運営会社が提供するのはあくまでプラットフォームであり、環境やサービスはユーザーが作り上げてゆく世界であるからです。そしてここから、新たなコミュニケーションやビジネスが生まれているのです。現在、セカンドライフ内の人口は現在約900万人、日本人も約25万人にのぼっています。またサービスの提供側として、アパレル、スポーツ、IT、情報通信、食品関連、大学など、多岐に渡るジャンルの企業や団体(日本を含む)が参入しています。」
「セカンドライフの大きな特徴の1つは、人格を持つ『アバター』を登場させ、その人格に対してコミュニケーションできる空間を生み出したことです。たとえば、ここにご参加の皆さんも会社では『部長』、家では『父親』、休日は『サッカーチームのコーチ』といった複数の人格を持っているでしょう。セカンドライフ内での『アバター』は、既存の概念にないもうひとつの人格、とも言えます。アバターの身体的特徴や服飾は自由に設定できますから、自己表現が可能です。たとえば、パンクが好きな70歳男性のアバターは、リアルな外見ではなく、パンクな青年の姿をしているかもしれません。そうすると、たとえばセカンドライフ上でコンサートチケットを販売する場合、売り手はパンクなアバター(実は70歳)と、スーツ姿のアバター(実は25歳)のどちらに働きかけるでしょうか。ここで、バーチャルワールド上の人格に対してものを売る『アバターマーケティング』という概念が発生するのです。」
「次に、コミュニケーション手段について考えてみましょう。『10年前』は、相手と直接会って打ち合わせをする、書類は郵送かファクスで送る、相手が不在のときは電話で話ができない、というのが普通でした。しかし『現在』は、誰もがeメールを使って相手に連絡を取り、書類もeメールで送り、携帯電話でいつでも相手と直接話しています。これは、誰もがメールアドレスや携帯電話を持つ時代になったから可能になったのです。では『10年後』を予想してみるとどうでしょうか。たとえば『会う』といえばバーチャルワールド内でアバター同士が会うことを指す、というのが当たり前の世界になっているかもしれません。ビジネスにおいてもそれが普通で、リアルに、つまり実際に会うというのは本当に特別な場合だけということになれば、時間やコストが極限まで削減・効率化されるでしょう。」
「日本においては、セカンドライフのユーザーが100万人を突破したら広告市場として成り立つであろうと予測されます。その普及のカギとなるのが、携帯電話でのセカンドライフの利用です。これが可能になれば、eメールアドレスや携帯電話番号のように、誰もがアバター名を所有するようになるでしょう。そして、自分自身は電車の中にいても、携帯電話のセカンドライフ内にいるアバターは他のアバターと会って会話を楽しんでいる、ということも普通になってくるでしょう。」
「現在10~15歳の子供は、幼い頃からゲームのバーチャル空間、3Dキャラクター、通信によるコミュニケーションなどに慣れ親しんでいます。ですから、セカンドライフのような世界観の受け入れはとてもスムーズだと思われます。10年後、その彼らが20~25歳になる頃には、今の我々には想像もつかないようなバーチャルワールドを作り出す人物が現れるかもしれません。」
と、次世代への期待を力強く語られました。
富士通講演
NGN時代におけるネットワークサービスの取り組みについて
川妻 庸男氏
富士通株式会社
ネットワークサービス事業本部長
経営執行役
基調講演に続き、富士通ネットワークサービス事業本部から、ITやネットワークの動向と事例、およびサービス充実に向けての取り組みなどを紹介させていただきました。
講演の中心となったのは、ネットワークを活用した下記の最先端事例の紹介です。ネットワークが生活やビジネスをどのように変えていくのか、より具体的なイメージを持っていただけたことと思います。
ご紹介した最先端事例
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揺れる前の地震通報システム。気象庁で地震の発生が感知されると、緊急地震速報がネットワーク経由で一斉配信され、「
秒後に揺れが来ます」等の放送や、パソコン画面への警告表示を行う。参加者の顔だけでなく、全身の動きまで投影されるバーチャル会議室でテレビ会議を実施。ネットワークにより、離れた相手とでも臨場感あふれるミーティングが実現できる。
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1台の携帯が、シームレスなネットワークによって社内では内線電話に、社外では外線電話にと自動的に切り替わる。また、顧客情報参照や日報作成などの業務端末としても使用できる。
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強固なセキュリティを持つネットワークを使って、健康情報バンクを構築。個人の検診情報を、複数の医療機関で安全に共有できることにより、健康管理・支援を実現する。
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通常は様々な広告を順に表示しているだけだが、人が近づくとインタラクティブ表示に変わる広告。画面をタッチして詳しい情報を探したり、携帯やカードにクーポンをダウンロードしたりできる。
また、企業向けネットワークサービス「FENICS」を大幅に強化した「FENICSⅡ」も併せて紹介させていただきました。端末の開発も含めた利用シーンの拡大、サービスのグローバルな展開、バックボーンの整備、この3点がFENICSⅡにおける強化ポイントです。
お客様事例講演
情報システム化戦略における「ネットワークサービス」のポイント
岩佐 和紀氏
株式会社ベストブライダル
管理本部
株式会社ベストブライダル様では、貸し切りの邸宅にお客様をお招きする「ゲストハウスウェディング」を中心に、国内外でブライダルビジネスを展開しています。今回のセミナーでは、企業戦略としての富士通ネットワークサービス導入事例として、管理本部の岩佐 和紀様にお話いただきました。
「当社のビジネスで重要なのは、お客様とより多く向き合い、より満足いただける式を演出すること、そして常に半年以上先の流れを予測し、先手を取って設備やサービスの改善を行うことです。しかし、以前利用していたASPはBフレッツにもかかわらず回線速度が非常に遅く、グループウェアなどが使える状態ではなかったため、事務系業務に時間がかかりお客様との時間が取られてしまう、迅速な情報共有ができずに対応が遅れる、といった問題があったのです。また、サーバ等の資産が各事業所に分散されていたため、管理やトラブル対応も大変でした。」
「当社では2006年に情報システムの刷新を図り、大手ベンダー5社に提案を依頼しました。その際に重視したのが、拡張性と柔軟性です。当社のビジネスは劇的に成長しており、しかも時代の流れに応じて常に変化しているからです。また、ハード、アプリケーション、ネットワーク等の導入・運用を一本化してアウトソーシングできることも必須条件でした。特に障害時においては、窓口が一本化されていないと当社の負荷が非常に大きくなりますから。これらの条件に最も一致したのが富士通でした。」
「当社はネットワークサービス『FENICS』とハードウェアをまとめて導入しました。その結果、同じBフレッツとは思えないほど回線速度が向上し、各拠点でグループウェアが使用可能になって、業務の効率化と迅速な情報共有に結びつきました。トラブルも富士通が一括対処してくれるので、こちらはあとで障害レポートを見るまで気がつかないほどです。既存ネットワークから新ネットワークに順次移行する、当社の稼動日である土日を避けて作業する、といった条件をクリアしたのも評価しています。」
「インフラが整ったので、ストレージの共有、経営ビジョンのストリーミング配信など、次の課題が見えてきました。また、ネットワークの機能とスピードをさらにアップし、お客様と向き合う時間をより増やしていきたいと考えています。」
と、ネットワークのさらなる活用に向けての抱負を語られました。
ベストブライダル様で導入した製品
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ルータ等ハードウェア
デモンストレーション
講演に加えて、会場では下記ネットワークサービスのデモンストレーションも実施いたしました。実際の機器に触れ、その機能を体験しようと、多数の方々がデモコーナーで足を止められていました。
用語解説
(注1)NGN(エヌジーエヌ)
Next Generation Network の略。直訳の通り「次世代ネットワーク」のこと。アナログの電話網とインターネットなどのデジタルのIP網は、これまで別々に整備されてきた。NGNは、これらをすべてIPネットワークとして再構築し、さまざまな通信サービスを提供することを目的としている。シームレスなネットワーク環境が実現し、各種のサービスが有機的に連携できるようになるため、多用な活用が想定される。
(注2)セカンドライフ(Second Life)
アメリカのリンデン・ラボ社が運営するインターネット上の3Dバーチャルワールド。住人はアバターとして存在し、空間内を自由に移動したり、他のアバターとテキストチャットやボイスチャットなどのコミュニケーションを取ったりすることができる。経済活動にはリンデンドルという仮想通貨が使用され、商品や土地の売買などが行われている。セカンドライフ内ではユーザーが自由にコンテンツを作成できるため、多くの企業や団体が宣伝やビジネスのために参入している。
セカンドライフ日本語版 公式ホームページ