このページの本文へ移動

クラウドを活用した遠隔管理による保守サービス基盤の確立で
海外市場におけるプレス機械の製品競争力を向上

株式会社栗本鐵工所様 製品写真

株式会社栗本鐵工所様 導入事例


海外展開するメーカーに納入した産業用機械に求められるのは、高い生産性と安定稼働です。保守・点検や修理に伴うダウンタイムを最短にするためには、機械の稼働状況を遠隔から監視する保守サービスが威力を発揮します。ネットワークのセキュリティ、各国で異なる通信キャリア事情、ワイヤレスネットワーク環境の調整にワンストップで対応するM2Mサービスが、産業機械の保守・管理を大きく変えようとしています。

[ 2011年10月25日掲載 ]

【導入事例概要】
業種: 製造業(産業用機械)
導入サービス: FENICS Ⅱ M2Mサービス注1
構築期間: 3ヵ月
【課題と効果】
1 稼働情報に基づく遠隔保守サービスにおいての懸念事項である、ネットワークのセキュリティ問題を払拭したい エンドユーザのネットワーク環境に依存しない専用の閉域ネットワークを利用したサービス導入により、特に海外新規設備投資に関する商談がスムーズに進むようになった
2 設置先のネットワーク回線調整、動作検証作業などの負荷を軽減する必要がある 遠隔保守サービスの基盤がワンストップで提供され、設置先に通信機器を持ち込むだけでサービス立ち上げが可能に
3 海外では、日本国内の場合と異なり、お客様の主要設備に“安心”という付加価値をどのように提供するかが難しかった。 本サービス導入により、海外設置設備の迅速な復旧・ダウンタイム削減が見込まれ、お客様は海外でも日本国内と同様の安心感を持ちながら設備導入が可能に

入力フォーム 本事例に関するお問い合わせ

導入の背景

産業機械の信頼性を支える保守・管理サービス

株式会社栗本鐵工所様は、1909年(明治42年)創業以来、上下水道用送水管など社会インフラ製品、産業用機械の製造販売を手がけてきました。なかでもプレス機械をはじめとする産業用機械の評価は国内外において高く、自動車、建機、食品、化学、電気・電子、医薬、エネルギーなど、各業界の製造ラインを支える装置として、グローバル展開する企業などの主力工場で稼働しています。

株式会社栗本鐵工所 機械システム事業本部 機械事業部 産業機械営業本部鍛圧機部 部長 北村 勝彦 氏の写真
北村 勝彦
株式会社栗本鐵工所 機械システム事業本部 機械事業部 産業機械営業本部鍛圧機部 部長

一般に、生産ラインを構成するプレス機械などの産業用装置は、製品の加工精度はもちろん、高い生産性を維持するため、安定稼働が求められます。そのため各装置のメーカーには信頼性の高い保守管理技術とスピーディーな対応が求められます。同社 産業機械営業本部 鍛圧機部 部長の北村勝彦氏は「日本国内だけでなく、海外の納入先でも高い生産性と安定稼働を実現していくためのアフターサービスを充実させることが、私どもの責務。顧客とは設備導入後も信頼の絆を深めていくことが持続的なビジネス発展の鍵となります」と語っています。

ダウンタイムを大幅に短縮する遠隔保守サービス

とりわけ迅速で正確な対応を必要とするのが、海外における突発的なトラブル発生時のデータ収集です。「まずは現場の状況をすばやくこちらが把握しなければなりません。医師にたとえると、問診や触診のようなもので、従来のように電話・メール・ファックスだけだと、場合によっては大事な情報が伝わらない、誤って伝わることもあるといいます。当社の技術者が現地に到着して初めて、想定とまったく異なる原因だったということも起こり得るのです。その場合、準備不足で対策が遅れたりもします。ジャストインタイムの生産体制を敷くお客様にとって、プレス機械の長期稼働停止はまさに致命的です。場合によっては、海外拠点で不足した製品を、日本から供給することも可能かもしれませんが、今日のような円高下では、経営的に大きな損失です。ダウンタイムを極力短縮するためには初期対応においても正確な判断が求められるのです」(北村氏)。

そこで同社は、遠隔で保守管理するサービスの構築に取り組みました。対象となったのは『C2Fシリーズ』という温・熱間鍛造用機械プレス。主に自動車部品を加工するこのプレス機械は国内外で250台以上の納入実績を誇る同社の主力製品の一つです。「遠隔管理で機械摺動部の温度変化、荷重、トルク、その他電気的な異常表示など客観的なデータをしっかり把握したうえで技術者が現場へ急行すれば、的確な判断に基づく対処でダウンタイムを最小限にとどめることができます。また、お客様でも簡単に修復できるトラブルだとわかれば、遠隔指導のみで復旧できることもあるわけです。」(北村氏)。

採用のポイント

保守サービスを展開するうえで強みとなるのは高いセキュリティ

実は以前から、「遠隔管理によって保守サービスをもっとスピーディーにできないだろうか」との要望は寄せられていました。同社 鍛圧機技術部 電装グループ グループ長の中谷京治氏は次のように述べています。「技術的には可能でした。しかし、お客様の事業所ネットワークを使用するとセキュリティが確保できない、通信テストが必要、各国の通信キャリアごとに異なる通信サービスや機器にどう対応するか、などがネックになりました。また、仮に自社でシステムを構築した場合、関連する技術スキルを持った要員を多数抱えなくてはならないなどのハードルもありました」。

株式会社栗本鐵工所 機械システム事業本部 機械事業部鍛圧機技術部電装グループ グループ長 中谷 京治 氏の写真
中谷 京治
株式会社栗本鐵工所 機械システム事業本部 機械事業部鍛圧機技術部電装グループ グループ長

同社は検討の末、富士通の「FENICS Ⅱ M2Mサービス」導入を決めました。その理由について北村氏はこう語っています。「閉域の専用回線なのでお客様側のセキュリティについて心配がない。しかも信頼性の高い富士通の回線なので、お客様にとって社内の承認が得やすいのではないでしょうか。こうした保守サービスは販売上の強みにもなります」。また、中谷氏はこう述べています。「当社の遠隔保守サービスの展開は新興国を含めた海外なので、お客様の環境に依存せずに導入できる富士通のワイヤレスネットワークが有利です。各国でのネットワーク接続、認証済みの通信端末の調達などをワンストップで対応している点も魅力でした」。

システムの概要

データの抽出・蓄積の仕組みはクラウド基盤上に用意されている

設置したプレス機械には、同社が調達した遠隔保守のソフトウェアが搭載されます。これにより監視するデータは、プレス機の温度と変位信号、トルク、フィードバックパルスなど。ソフトウェアから吸い上げられたデータは、M2Mサービスにより同社に提供されます。具体的にはプレス機械に搭載する通信機器、ワイヤレスネットワーク、富士通データセンターのクラウド基盤、固定回線を経由したメンテナンスサービス専用の閉域ネットワークです。

株式会社栗本鐵工所様 システム概要図

プレス機械に搭載された通信機器の起動/通信指示、および稼働データの蓄積は、クラウド基盤の管理Webにより行われます。また、抽出・蓄積したデータを利用するため、アプリケーションソフトのインターフェースも、クラウド基盤側に用意されています。

同社 材料技術開発部 情報技術グループの小俣尚泰氏は、こう述べています。「データの抽出や蓄積の仕組みは、すべて富士通データセンター側に用意されています。したがって当社の作業はお客様の現場に通信装置を持っていって設置するだけ。さらに、従来から利用しているメンテナンス用ツールを流用することができ、要員のトレーニングも非常にスムーズで、システム設計・構築作業は予想以上に簡単でした。また、設置後の通信インフラの管理・保守もすべてM2Mサービスに任せられるので、専任の技術者を抱える必要もありません」。また中谷氏は、富士通のサポートについてこう語ります。「通信機器の設置時には通信テストを行い、通信速度がしっかり実用範囲に収まっているかチェックします。テストスケジュールはお客様や当社の事情でめまぐるしく変わることもあるのですが、富士通の柔軟な支援体制のおかげで最短日時で終了。約3ヵ月でビジネスを開始できる環境が実現しました」。

株式会社栗本鐵工所 技術開発本部 材料技術開発部 情報技術グループ 小俣 尚泰 氏の写真
小俣 尚泰
株式会社栗本鐵工所 技術開発本部 材料技術開発部 情報技術グループ

導入の効果と今後の展望

富士通との協働でより加工精度の高い次世代プレス機械に挑戦

「FENICS Ⅱ M2Mサービス」を活用した「クリモト遠隔保守サービス」として2011年8月から販売を開始しました。同社はスタートに先立ち、強い手応えを感じているといいます。「多くの企業が、海外工場の現地担当者との言葉の壁という課題を抱えています。例えば生産ラインの状況把握における微妙なずれなどですが、遠隔保守サービスで把握した明確な数値データを共有することでより確かなコミュニケーションが保たれるのです。2011年8月の展示会では、多くのメーカー様がこのメリットを理解し、商談が進みました」(北村氏)。また中谷氏は、今後への期待を込め、こう語っています。「遠隔保守サービス普及の先に期待するのは、プレス工程後ほとんど仕上げ工程を必要としない高精度のスマートプレス技術確立です。富士通が掲げるセンサー、ネットワーク、クラウドなどの技術と協働することで、これを実現できると考えています」。
富士通は、お客様のビジネスに付加価値をつける「NextValue™」の取り組みにより、M2Mを進化させ、グローバルステージで躍進する製造業を力強く支えてまいります。

株式会社栗本鐵工所の皆様

営業からの一言

FENICS Ⅱ M2Mサービス」を海外での円滑な保守サポート実現するための手段として、採用頂いたことは、大変光栄に思います。
今後は、「FENICS Ⅱ M2Mサービス」の更なる活用のご提案にとどまらず、弊社ICT製品やサービスが、栗本鐵工所様の製品に新たな価値を生み出す提案をさせて頂き、真のビジネスパートナーとして、貢献できるよう頑張ってまいります。

産業ビジネス本部 関西産業統括営業部 組立産業営業部 本田孝司
産業ビジネス本部 関西産業統括営業部 住建産業営業部 鯉淵慶二

【株式会社栗本鐵工所様 会社概要】
代表者 代表取締役社長 福井 秀明 氏
所在地 〒550-8580 大阪市西区北堀江1丁目12番19号
設立 1934年5月(昭和9年)
創立 1909年2月(明治42年)
資本金 311億円(2011年3月末現在)
社員数 1,971名(2011年3月末現在・連結)、1,353名(同・単独)
事業概要 鋳鉄管・鋳物、バルブ、鋼製構造物、機械・化学装置、建材、化成品等の製造販売、および建設業
株式会社栗本鐵工所様のロゴ
ホームページ 株式会社栗本鐵工所 ホームページ新規ウィンドウが開きます

【ご紹介したサービス】

【導入事例(PDF版)】

用語解説

注1: M2M
M2M(エムツーエム、Machine-to-Machineの略)とは、ネットワークに繋がれた機械同士または機械と情報システムが、人間を介在せずに相互に情報交換し、自動的に最適な制御が行われるシステムです。

本事例に関するお問い合わせ

Webでのお問い合わせ

入力フォーム

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。

お電話でのお問い合わせ

0120-933-200 富士通コンタクトライン(総合窓口)

受付時間 9時~17時30分
(土曜・日曜・祝日・当社指定の休業日を除く)

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。