札幌市民の足である地下鉄や路面電車の事業を展開する札幌市交通局様は、付帯収入である広告収入を増やすために、大通駅地下コンコースにクラウド型デジタルサイネージシステムを導入。コンテンツ管理システムにクラウドサービスを利用することで、運用負荷を大幅に軽減し少人数で安定したサービスの提供を実現しました。また冗長化により端末故障時もサービスを継続的に提供可能な仕組みを構築。サービス開始後、新規広告媒体として注目され広告収入が増加、市営交通の新しい顔として市民に親しまれています。
[ 2016年06月13日掲載 ]
業種 | 陸運業 |
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ソリューション | FUJITSU Business Application デジタルサイネージサービス |
導入期間 | 約3.5カ月 |
規模 | 48面 |
限られた人員で効率的かつ安定的にデジタルサイネージ広告を運用したい | コンテンツ管理システムをクラウドサービスとして利用することで、社内セキュリティを強化することなく、社外の広告代理店がセキュアにシステムを利用でき、安定的な運用を実現。またハードウェア資産を所有しないことから業務負荷を大幅に軽減 | |
広告主との信頼性向上のため、端末故障によるサービスの停止をなくしたい | 端末の冗長化により端末故障時もサービスの継続提供を実現。広告主に大きな安心と信頼を提供するとともに、札幌市交通局様のデジタルサイネージ広告の大きな強みに |
1909年に開通した馬車鉄道が札幌の公共交通輸送の始まりです。以来、市営交通は安全・安心をベースに快適な都市生活を守るべく、他の交通機関と連携しながら札幌市の成長とともに走り続けています。
札幌冬季オリンピックの前年、1971年には全国の都市の中で4番目に地下鉄が開通しました。札幌の市営地下鉄は3路線49駅を有し、毎日60万人近くが利用しており、積雪、寒冷といった北国の気候に左右されない「暮らしの足」として公共交通ネットワークの主役を担っています。札幌市交通局様は市民の暮らしに欠かせない地下鉄に加え、100年近い歴史を持つ詩情あふれる路面電車も運営しています。
安全で確実な輸送サービスを継続するために札幌市交通局様は経営の健全化に努めるとともに、これからの時代に合った利用者サービスや施設の改善に取り組んでいます。
「人口減少や少子高齢化の進展などの要因から市営交通の利用者数の減少傾向は続いています。今後も大幅な改善の見通しが立たないことから、経営基盤の強化を図るために乗車料収入以外の付帯収入である広告収入の増加は不可欠です」と札幌市交通局 事業管理部 営業課 営業課長 木村武資氏は話します。
これまで同局の広告媒体としては、車内広告、駅施設広告などのポスターが中心でした。しかし、広告ポスターを貼るスペースは限られており、紙媒体による広告収入の増加には限界があります。そこで追加広告媒体として同局はデジタルサイネージに注目しました。
木村 武資 氏
札幌市交通局
事業管理部 営業課
営業課長
中村 保司 氏
札幌市交通局
事業管理部 営業課
資産活用係長
全国の鉄道事業者において、広告収入の増加を目的にデジタルサイネージを導入するケースが増えています。限られたスペースで回転率を上げることにより効率的に広告収入の増加を可能にするためです。札幌市交通局様は地下鉄南北線大通駅周辺の地下コンコースの整備と合わせ、デジタルサイネージシステムを導入するべく2013年から調査検討を開始しました。同局がシステムの要件の中で重視したのが「クラウド型のコンテンツ管理と端末の冗長化」でした。
「コンテンツを配信するコンテンツ管理システムは、インターネット経由のクラウドサービスとして利用できることを要件の1つとしました」と札幌市交通局 事業管理部 営業課 資産活用係長 中村保司氏は話し、その理由をこう述べます。
「オンプレミスでコンテンツ管理システムを構築する場合、当局で運用管理や保守を行わなければなりません。また同システムは、広告代理店各社がコンテンツ登録時に利用するためセキュリティの強化も必要です。導入コストや運用コストの抑制に加え、限られた人員で広告事業を担っており、運用負荷軽減の観点からもクラウドサービスを利用するという結論に至りました」。
デジタルサイネージ広告で最も懸念されるのは設備故障によるサービスの停止です。同局は広告主との信頼関係を築くうえで欠かせないサービスの継続性を実現するために冗長化を要件の1つとしました。
「いかにサービスの継続性を確保していくか。デジタルサイネージ部門を立ち上げて運用しているケースも多くあります。当局は広告事故を防ぐために冗長化しサービスが止まらない仕組みを構築することにしました。サービスの継続性の実現は当局のデジタルサイネージ広告の大きな強みです」と札幌市交通局 事業管理部 営業課 資産活用係 藤田大介氏は話し、こう続けます。
「クラウド型利用と冗長化は非常に難しい要件でしたが、札幌の現場とコンテンツ管理システムの運用監視を行う富士通データセンターの間で夜間テストを何回も繰り返すなど、富士通さんは一丸となって当局の要件に応えてくれました」。
藤田 大介 氏
札幌市交通局
事業管理部 営業課
資産活用係
札幌市交通局様のデジタルサイネージシステムは大通駅周辺の地下コンコースにある12本の柱の両側面に60インチディスプレイを縦2面の構成で合計48面を設置。1つのディスプレイに端末を2台接続し、通常使用の端末に故障が発生した場合、バックアップ用に表示を切り替えてサービスを継続します。また、端末間での同期機能により複数台のディスプレイでコンテンツ表示のタイミングを合わせているため、通行者に対し視覚的なインパクトをもたらすことが可能です。
同システムではクラウドサービスとして提供するコンテンツ管理システムを中心にコンテンツの登録から配信までオンライン化を実現。また広告主や代理店の依頼を受け付ける広告受付管理システムや、ニュースや天気予報などの外部コンテンツ提供システムとも連携しています。
今回、広告代理店が入力しやすいように、また登録されたコンテンツが公共放映にふさわしいかどうかを同局がチェックしやすいように、ボタンの位置や地下コンコースの地図の表示などコンテンツ管理システムの画面のカスタマイズも行っています。
札幌市交通局様のデジタルサイネージ広告SAPPORO SNOW VISIONは、2015年10月に東柱6本、2016年2月に西柱6本で配信を開始。大通駅は乗車人員1日平均37,000人、地下コンコース通行者人員(平日)77,000人と高い広告効果が期待できるため多くの企業から注目されています。
「デジタルサイネージ広告の導入により、当局が扱える広告件数や掲示枠が増加し、さらに時間単位での掲示も可能になり、広告媒体で得る年間広告収入が増大しました。広告のデジタル化へのシフトは間違っていなかったという感触が得られました」(藤田氏)。
これまで広告依頼のなかった業種のお客様からデジタルサイネージ広告を利用したいといったニーズもでてきていると中村氏は話します。「企業のお客様だけでなく、道内の自治体様からも産地ブランドや町のPRに活用いただいています」。
「今後も稼働率は課題です。また広告コンテンツが配信されていない時間帯は富士通さんと相談してニュースや天気予報を流しています。画面に注目してもらうことが狙いです」と藤田氏は話します。
時間帯や1週間ジャックなど様々なバリエーションにより広告収益の拡大も図っています。またペーパーレス化によりポスターを貼ったり廃棄したりといった作業コストを削減するとともに地球環境保護にも貢献しています。
今後の展開については、「単なるコンテンツの配信だけでなく、時間や場所、利用者属性などに合わせスマートフォンのコンテンツやアプリケーションを自動表示したり切り替えたりして、利用者の利便性がより一層向上するような新しいサービスも検討していきたい。また広告の相互乗り入れも今後のテーマです。富士通さんには安定稼働はもとよりデジタル広告の付加価値を高める先進的な提案を期待しています」と木村氏は話します。
富士通のデジタルサイネージサービスはお客様とともに価値を創造し、ICTを活用して新時代の広告媒体としての可能性を広げていきます。
所在地 | 〒004-8555北海道札幌市厚別区大谷地東2丁目4-1 |
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代表者 | 交通局長 相原 重則 |
設立 | 1927年12月 |
従業員数 | 663人(2015年4月1日現在) |
事業概要 | 鉄道事業 地下鉄(南北線、東西線、東豊線)、路面電車 |
ホームページ | 札幌市交通局様 ホームページ |
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