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ワタミの「理念」を具現化する
人とITが共存するコミュニケーション環境

ワタミ株式会社様 導入事例
お客様の「ありがとう」を集めるために
多岐にわたるワタミの事業を支える「理念」


「居食屋」という独自のスタイルを提案し外食産業を牽引するワタミ。同社では事業の多角的な展開を進めるにつれ、従業員間のコミュニケーションを活性化させるシステム作りの必要性を感じていた。
企業理念である「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」を実現するためのコミュニケーション基盤とは。

[ 2011年6月14日掲載 ]

【導入事例概要】
業種: 小売業
導入システム: 統合コミュニケーションシステム

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すべては「ありがとう」のために


ワタミ株式会社
IT戦略グループ
グループ長 小西淳一氏

2010年7月28日、青山ダイヤモンドホールにて第12回ITmedia エグゼクティブフォーラムが開催された。事例セッションにはワタミ株式会社 IT 戦略グループ グループ長の小西淳一氏が登壇し、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになるために ワタミのコミュニケーション戦略」というテーマで講演を行った。

ワタミは昭和59年4月に創業、すでに25年以上にわたりワタミブランドでビジネスを展開している。
ワタミは「居食屋」という独自の外食のスタイルを提案し「飲むだけでなく、食べるだけでもなく、時間、空間を楽しむ」をコンセプトに外食事業をリードしている。「和民」を中心に「和み亭」「わたみん家」「響の屋(きょうのや)」など、多様な店舗を全国に約650店、さらにアジアを中心に海外でも約40店舗を展開している。

「昨年オープンした『ごちそう厨房 響の屋(きょうのや)』は、家族3世代で楽しめるファミリーレストランです。コンセプトは、ご来店下さるお客様がお腹いっぱいになること。注文したものが1人1人専用のお膳に載って運ばれてくるのですが、それを見た瞬間たくさんあって食べきれないよという言葉をよくいただきます。そして、食事をして、皆さん笑顔になるのです」と、新たに開始したファミリーレストランについて小西氏は説明する。笑顔になってもらい、お客様に「ありがとう」という言葉をいただくことこそが、ワタミの企業理念なのだ。

現在は外食事業に加え、業界としては極めてチャレンジングな目標であるおむつゼロ、特殊浴ゼロ、経管食ゼロ、車いすゼロの4大ゼロに取り組む介護事業、高齢者向け弁当宅配事業、さらには食の基本である安全・安心を追求した結果、自ら関わることにした農業、そして、企業活動で地球環境への負荷を与えないようエコロジーな活動をするための環境/メンテナンス事業、バラエティー豊かで常に変化し続けるメニューを支え、安全・安心な製品を安価に提供するためのマーチャンダイジング事業を展開している。これらのすべての事業の目的が「地球上で一番たくさんのありがとうを集める」ことだ。

理念経営を徹底するためのコミュニケーション環境

ワタミグループは、ワタミ株式会社がホールディングカンパニーとなり、その下に各事業を担当する企業が連なる形で運営されている。IT戦略グループはワタミ株式会社に所属し、IT体制の再構築およびグループの経営方針に基づいたITの中長期計画の策定をミッションとしている。今日のような変化の激しい時代にITの中長期計画を立てるのは容易ではないが、IT戦略グループは経営者との距離が近いため、経営ビジョンに即したIT計画の策定が可能と小西氏は言う。

IT部門の業務の中心となるのは「業務プロセスの標準化」と「オペレーションの分析」、さらに「コミュニケーションの分析」だ。
「IT部門はシステム導入などで大規模なお金を使う機会が多いので、ついつい新たに大きな買い物をしたくなりますが、IT部門の本来の仕事はこれら3つをきちんと実施し、本当に必要なものに投資することです」と小西氏は指摘する。ビジネスが拡大する中でこの3つを十分に実施し、本当に必要なものを見極めるというのは、実際はかなり難しいところでもある。
そこで重要になるのが前述の「理念」である。ワタミでは何かを判断する際には基準とすべき理念に基づいて選択する。それが揺るぎのない経営につながっているのだ。

理念とは「その企業が目指す、存在意義、活動、目標を示した普遍的なもの」と小西氏は説明する。それが「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というワタミのグループスローガンとなっている。
「ワタミでは常に理念に基づく行動が求められます。これを分かりやすく表したものが各グループの目標であり指針です。ワタミの理念はなにも特別なことではなく、人として正しい道を歩きなさいということなのです」と小西氏は言う。ワタミでは、お客様に対してだけでなく、お取引先企業に対しても同じ考え方で対応しているという。

その1つの例として会議の時間設定がある。ワタミでは時間のかかる会議などは早朝もしくは就業時間後に行う。これは、お取引先の就業時間を考慮し、電話などの問い合わせに自席で対応できるようにするためのものだ。
1人1人の社員が理念を信じられるようにし、それを実行できる環境を作ることも大事だ。そのため、理念教育に時間も手間もかけている。過去の事実をもとにワタミの理念の探求を行う研修プログラムがあり、さらに理念の理解を図るテスト、上司が個別に行うカウンセリング、経営者からのメッセージを伝えるビデオレターといったものが活用されている。これらを活用し、経営者、上司と従業員の間のコミュニケーションを図っていくのだ。

ワタミが求めていた情報共有基盤を実現

小西氏によるとワタミはもともとIT投資にはそれほど積極的ではなかったという。従来は店舗などで利用する仕組みは既存のパッケージ製品を活用することで十分に業務の効率化が図れていたからだ。ところが外食以外の業態も加わり、またグローバルにビジネスを展開するにつれ、状況は変わってきた。
「ビジネスが多様化し、パッケージを買ってきて利用するだけでは済まなくなってきました。そのため、新たなコミュニケーションの仕組みをITで構築する必要が生じたのです」
その際に重要になるのは、ITで厳密にやるべきことと、人の自由な裁量に任せるべきことをきちんと分けることだと小西氏は指摘する。

「オペレーションを実施する際には事実に基づいた報告が重要です。属人的な判断ではなく、事実が絶対的なものでなければならない。そのため、余計なコラボレーション機能は必要ありません。逆に、新しい試みを創造する場合はこれとは異なります。いいアイデアが出やすいコラボレーション機能を適宜選ぶことになります」と小西氏。

社内での検討の末、導入を決めたのが、シスコシステムズと富士通、そしてソフトバンクの三社協力体制で提供されるコミュニケーション基盤だ。小西氏はシスコや富士通と密に連携しながら、ワタミの理念を実現するためのコミュニケーション基盤を作り上げていくと、ベンダーとのパートナーシップを強調する。
「ワタミが目指すものは理念の中にはっきり提示されています。その中で費用対効果を考えIT投資をし、購入したものは最大限に活用していきたい」とコミュニケーション活性化に寄与するITの力に期待を込め、小西氏は講演を結んだ。

事業拡大とグローバル化を意識したコミュニケーション基盤の変革

事業の拡大と海外展開に伴い、社内のコミュニケーション基盤を刷新したワタミ。新たなシステムの構築の背景にあったのは、顧客に対して最高のサービスを提供する、という思いだった。その思いを実現するため、ワタミはベンダーとの良好な関係を築き、わずか20日あまりというスピード展開に成功する。

ビジネスの拡大に対応できるコミュニケーションの標準化

「ワタミ」ブランドで25年以上にわたり外食ビジネスをリードし、現在は、介護事業、高齢者向け宅配事業、農業などビジネスの幅を広げ、海外展開も推進するワタミグループ。そのワタミグループが最も大切にするのが「理念」だ。その理念はグループスローガンである「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」に表れている。ワタミグループでは、すべての企業活動を、このスローガンを実現するために行うものと位置付けている。

グループのホールディングカンパニーであるワタミ株式会社では、理念を実現するための取り組みとして社内のコミュニケーション基盤の改善を検討していた。
ワタミでは中核となる外食以外にも事業を拡大しており、業務の標準化の推進がこれまで以上に重要になっていた。属人化を排除し、統一されたオペレーションを徹底するには新たなコミュニケーションの仕組みが必要になっていたのだ。
ワタミのIT戦略グループ グループ長の小西淳一氏は、従来利用していたPBX(構内交換機)がリプレースの時期を向かえた際に、単にPBXを入れ替えるのではなくこれを好機として社内コミュニケーションのあり方を再検討した。
小西氏は、企業においてPBXは社内コミュニケーションの根源的な仕組みの1つだと言う。ところが多くの日本製PBXは、ある種どっぷり日本の文化に浸っており、今後のワタミグループの展開にはそぐわないとの判断があった。
「日本の一般的な会社において、1人1台の電話環境はまだまだ一般的ではなく、誰かに電話がかかってくると部署の電話が一斉に鳴り出す。電話の取り次ぎによる業務の中断によるロスもさることながら、コミュニケーションをとりたい時にすぐに目的を達成できないことが問題でした」(小西氏)

検討の結果、行き着いたのが統合コミュニケーションの導入だった。
「社内での協議の末、IP技術を活用しさまざまな方法で従業員がコミュニケーションおよびコラボレーションできる、統合コミュニケーションを採用することになったのです」(小西氏)

統合コミュニケーションは、電話、メール、メッセンジャー、テレビ電話など、さまざまなコミュニケーション手段を統合し、情報の伝達と共有を速やかに、かつ確実に進めるための基盤になるものだ。
そこで重要になるのは、利便性だけを優先するのではなく、コミュニケーションの目的によってそれらを自由に選べ、ストレスなく利用できるかどうかだ。

例えば夜中に電話をするのは、相手とすぐにでも話をしたい緊急の用件ということ。そのような緊急の際にメールしか連絡方法がないのでは迅速な判断が下せず、事態が悪化することにもなりかねない。また店舗でお客様から要望があった際に、その場で解決できず本部から電話で対応することが考えられるが、その際に相手のリアルな表情までもが分かるテレビ電話で対応したほうが、顧客満足度が高まる場合も考えられる。

統合コミュニケーションは、個人同士をつなぐためにさまざまな方法が準備される。目的に応じて最適なコミュニケーションをとれるソリューションだと小西氏は思ったという。
また、ワタミは「お客様がどこにいても最高のサービスを提供できる」基盤を必須としていた。そのために必要なことがオペレーションの徹底だ。安易な情報共有や出所の分からない情報が広がることで、統一されたオペレーションが崩れてしまうのは、何よりも避けなければいけないことだった。小西氏は、統合コミュニケーションはその目的に背かない情報共有の基盤を作れるだろうと判断し、導入に踏み切った。

目的に応じて自由にコミュニケーションを選択

もちろん新たなコミュニケーションの仕組みを導入するとともに、通信費用の削減も検討したという。その結果、ソフトバンクのFMC(Fixed-Mobile Convergence (注))サービス、そしてネットワークのバックボーンにはシスコシステムズ(シスコ)がインフラを提供する、富士通のFENICSビジネスIPネットワークサービスを組み合わせた環境を採用することになる。
ワタミでは、検討を始めた当初の2009年春頃には、PBXの入れ替えとFMCの組合せを考えていた。それはシスコと富士通が統合コミュニケーションソリューションで提携を開始したのとほぼ同時期だった。

(注)固定電話と携帯電話を統合し、シームレスなコミュニケーションを実現する基盤

「統合コミュニケーションは目的に応じて最適な方法を選べるソリューション」(小西氏)

シスコと富士通では、ワタミが描く理想のコミュニケーション像を吟味した結果、新たにFMCと統合コミュニケーションを組み合わせるソリューションを提案する。
「まずは既存の電話の仕組みを問題なく置き換えられること、個人ベースのコミュニケーションを可能にしたうえで業務の標準化にも繋げられると判断できたことが採用のポイント」と小西氏。今回の仕組みで海外とのコミュニケーションも容易になり、ワタミグループのチャレンジを広げるための基盤ができあがったとの実感があるという。

ともに苦労し、良いものを作り上げるパートナーシップ

採用するソリューションが決まり、具体的な設計作業に入ったのは2010年4月。設計には、およそ3カ月を費やした。
「徹底した業務分析を行い、新しいコミュニケーションの標準化に時間をかけた」
と小西氏は振り返る。2010年7月からは機器を導入し実際の環境構築が始まる。その後、なんと20日間程度と極めて短期間で最初のフェーズのカットオーバーを迎えることになる。電話インフラの総入れ替えにもかかわらず、システム的に大きなトラブルもなく順調にプロジェクトは進んだ。

プロジェクトが短期間でスムーズに進んだ要因の1つにはパートナーであるシスコ、富士通との良好な関係がある。小西氏は新たな仕組みの導入に際し「他社提案との相見積もりをとるようなことはなるべくしたくない」と言う。自分たちが導入するものなので、当然十分な情報収集も行い事前に費用感も把握している。相見積もりをとらなければならないような関係を築くよりも、最終的な提案をしてもらうまでに十分なパートナーシップを築き上げ、このベンダーに任せたいという関係作りをするほうがいいと言うのだ。

「頭だけで考え、良さそうなものを組み合わせて何でもできます、と言うのは信用できません。シスコと富士通は私たちと一緒に考え、苦労しながら提案してくれる。このやり方は時間も手間もかかり、時には互いの理解が足りずに満足がいかないこともありますが、互いに良いものを作り上げようと努力を惜しまないところを信頼しています」(小西氏)
富士通は、グローバル企業でもありアメリカナイズした考え方も理解しつつ、日本文化のいいところを融合させていると小西氏は評する。

「顧客の言うがままになるのではなく、ともに議論して正解を求めようとしてくれます。けんかのできないようなパートナーとは仕事をすべきではない」と小西氏。今回ワタミは富士通、シスコと一緒にプロジェクトを進められたことを高く評価している。

会社は常に成長するものだ。それに伴いITも変化を続けなければならない。それを支えてくれるパートナー企業にも、ともに変革を求め続けてほしいと、小西氏は将来を展望する。シスコと富士通はその期待に応えるサービスを提供していくだろう。

【ワタミ株式会社様 会社概要】
代表者 代表取締役社長:桑原 豊
所在地 東京都大田区羽田一丁目1番3号(〒144-0043)
設立 昭和61年5月
資本金 4,410,280千円(平成23年3月31日現在)
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【ご紹介したシステム】

  • 統合コミュニケーションシステム
    新たなワークスタイルを実現するとともに、コミュニケーションとIT システム を統合をすることで、ビジネスプロセス全体の最適化を推進し、企業価値向上を強力にサポートします。

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